このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
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はじまり、はじまり…

「信濃に神無月がない理由」
日本では、毎年十月になると神様が出雲国へ集って国造りの相談をすることになっているんだとか。

そこで十月はどこの国の神さまもお留守になり、神さまがいない月というので「神無月」と呼ばれるようになりました。
ある年の神無月のこと、信濃国の諏訪の龍神様の姿だけがどうしてもみえません。ほかの神さまたちは

そのうちお見えになるだろう
と待っていましたが、しまいには待ちくたびれてしまいました。ついには

信濃の神さまはどうした。病気か?それとも遅刻か?いつまで待たせる気だ…
と神さまたちがさわぎだしました。すると天井から
わたしはここだ
という大きな声が響きました。

!?!?どこから声が…
神さまたちは辺りをみまわして、天井を振り仰いで、そこにあるものを見てまっさおになりました。

天井の梁ほどもある龍がきりきりと巻きつき、真っ赤な舌をペロペロ出しているではありませんか。

信濃国は遠いで、こういう姿でやってきたのだ。わしの体はこの家を七巻半しても、まだ尾は信濃国の尾掛の松にかかっておる。部屋にはいって座らんかったのは、お前さんたちを驚かしても悪いと思ったからじゃ。それでずっとこの天井に張り付いておった。何なら今からそこへ降りて行こう
と言って、龍神はその大きな体をずるずると天井から降ろしはじめました。それを見た八百万の神さまたちは…

いやいや!
それには及ばん。なるほど、信濃は遠いで大変じゃ。これからは国におってくだされ、会議のもようや相談はこっちから出向くとしよう
…と慌てふためいて手を振り、龍神が降りてこようとするのを止めました。それで、龍神は

そうか、それはありがたいのう
と笑って、黒雲にのって信濃国の諏訪湖へ帰っていき…

そうして湖の底深くに姿を消しました。
それだから、信濃国には神無月はないといいます。
おしまい、おしまい。

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補足や元資料
元の採集場所や文献 | ― |
制作者が参考にした文献 | 日本の民話 10 「信濃・越中篇」p.214~215 |
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