このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。
はじまり、はじまり…
「屋良漏池」物語
昔、この屋良地区には漏池と呼ばれる池がありました。
そこには大蛇が住んでいて、
畑の物や、ヤギや豚など家畜も食べてしまうので、
村の人たちは困っていました。
それで、屋良から公儀(役所)のほうへこのことを申し上げました。
困った公儀は、ユタ(琉球の巫女)に解決策を尋ねてみることにしました。
すると、ユタは…
これはお願いするだけではいけない。最近雨が降らんのも、あの蛇が関係しとる。あんな生き物が作物を荒らすとはただ事ではない。
13、4のまだ男を知らない娘をここに生贄として供えなさい。そうすれば、その蛇はその娘を食べて死に、雨も降るだろう。
…と言ったそうです。
しかし、公儀ではそれが大変な問題となりました。
生贄の娘なぞ、どうやって選ぶことができるというんだ!
いや、そもそも人間を供えるなんて、そんなことがどうしてできるだろうか…
王の命令でも、そんな命令は出せない… どうしたらいいんだ…
悩んだ末、公儀は立札を立てることにしました。
その立札の内容とは、こうです。
ここに犠牲になるものがいるならば、
その家は公儀から一生食べ物を与える
そのころ。
首里から屋良に来て住んでいる人の中に、
母親と娘と長男の3人家族がいました。
その家族は、首里の人間だったので土地も持っておらず、
そのため畑仕事もできず、
日々麦の穂を拾って食べたりして、
大変貧乏な生活をしていました。
その家族の長女が高札の話を知り、家族にこう言いました。
…屋良の池の大蛇の生贄の話、聞いた?
このまま三人で生きるか死ぬかの毎日を過ごしてもどうしようもない。私が屋良漏池の大蛇の生贄になれば、母さんと長男であるお前は公儀から食べ物が与えられる。そうして元気になることができれば、また世の中を栄えさせることができるでしょう
それを聞いた弟は、姉と言い争いましたが…
いや、ダメだ姉さん。姉さんがいなくなったんじゃ、母さんを養ってやることができない…!
俺が行く、俺と代わってくれ…!
生贄として求められているのは女だという話なんだ!お前が行けるワケないじゃないか。
…私が行く。
…姉に根負けし、姉が大蛇の犠牲になることとなりました。
そうして、娘が屋良漏池の大蛇に捧げられる日。
姉は白装束を着て、供え物を飾った漏池の前で祈願していました。
――― … … …
~ ~ ~ ~
見物人もたくさん集まり、ユタも拝みをしていました。
――すると。
その最中に、突然風が渦巻き、雨が降ってきたそうです。
いよいよ出てくるのか…。一体どれほど大きい蛇なんだろう…
けれど、蛇は娘を食べに出てきません。
その瞬間。
/ピシャアァ!!\
雷が大きく鳴りました。
そうして雨と風はさらに激しさを増していき…
その蛇は、漏池で死んでしまっていたらしいです。
その娘は人徳があって、難を免れたんだとみんなが言ったそう。
それからみんなで屋良の拝所でお祝いをしたそうです。蛇は死んでしまったので、その娘は公儀の王さまのところにお祝いに行って、長男と母親は一生涯の食が与えられて、長男は公儀から妻をめとったそうよ。
おしまい。
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補足や資料
元の採集場所や文献 | 〇伝承地 沖縄県中頭郡嘉手納町屋良(『沖縄の昔話』) |
制作者が参考にした文献 | 日本伝説体系 15巻 pp.458-459 |