このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
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はじまり、はじまり…
「甲賀三郎」物語
その昔、近江(滋賀)の甲賀の里に甲賀太郎、次郎、三郎の兄弟が鹿狩りをして暮しをたてていました。
ある日、兄弟が若狭(若狭湾沿岸)の国の高懸山で猟をしていました。
次郎、獲物がそっちに行ったぞ!
お、おう!三郎!
兄さん、ぼくが仕留める!
すると、山の神が変じた大蛇と出くわしました。
腰がひけた太郎と次郎はころびころび逃げてしまいましたが、三郎は大蛇に勇敢に立ち向い退治しました。
あいつ倒しやがった…すげぇ…
し、しかしよ太郎兄。このまま里に帰ったら、俺たちが腰抜かして逃げちまったことが広まっちまう
それもそうだ…かくなるうえは…
三郎の奴を始末しちまおう。
「逃げた」という所業が世間に知れることを恐れた兄たちは、三郎を深い谷に突き落してしまいました。
けれど、三郎は死にませんでした。なんと、山の神が変じた大蛇と同じ姿になって信濃に抜けたんだそうです。
一方、甲賀の里に帰った太郎と次郎は、
みんな聞いてくれ、三郎が山の主に殺された…
俺たちも立ち向かったんだが、本当にでかい蛇だったんでな。どうすることもできなかったんだ…
…と言いふらしました。三郎の妻や子は大変深く嘆き悲しみました。
うそよ、あの人が死んだなんて…。亡骸も帰ってこないなんて…
お父う…もう会えないの…?
そうして三郎の妻は、三郎の菩提を弔うために観音堂を建てました。
観音さま、どうか、夫の行が一段と進み、再びこの世で出会えますように…
三郎の妻はひたすら念じました。
その甲斐あって、三郎は33年目に甲賀の里に帰って来ることができました。
ああ、懐かしい甲賀の里だ帰ってきたんだ…!
しかし、里人が三郎を指し、
うわっ、大蛇や、大蛇やおっそろしや
と大騒ぎをするもので、そこで初めて自分の身が大蛇に変わっていることに気づきました。
三郎は急ぎ観音堂の下に入り、どうか、元の身に変えてほしいと祈りました。
~~~(舌がうまく動かせず、人の言葉がしゃべれない…!)
そのうち、舌が柔らかくなり声も出るようになりました。
ナム、ナム、南無観世音さま
と唱えるうち人間の姿に戻ることができました。
観音堂を建てた妻や子に三郎はどんなにか感謝したことでしょう。
一方、兄たちはどうしたかといえば、罪の意識にさいなまれ自ら命を絶ったそうです。
やがて三郎は近江国の押領使となり、再び信濃に去り諏訪大明神になったそうです。
おしまい、おしまい。
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物語の舞台・資料や補足など
元の採集場所や文献 | 下リンク先より |
制作者が参考にした文献 | 週刊上田「甲賀三郎伝説3つ」その2 |