蛇婿譚・水乞い型・姥皮-水乞いに応じた大蛇に娘を差出すことになったが、娘は蛇を退治してその後姥皮を被りお屋敷の息子と結ばれる

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このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「登場人物紹介」「あらすじ」「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。

※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。

おもな登場人物紹介・あらすじ

おもな登場人物(登場順に紹介)

父様

田んぼをたくさん持っているが、「旱魃かんばつを解決してくれたら3人いる娘のどれか1人を嫁にやる」と口走ってしまう。

末娘

長女も次女も断った父親の頼みを聞き入れ、沼の主蛇に嫁入りするが、そのまま蛇を退治する。その後老婆の姿に化けて近くの村の大きな屋敷に雇われる。

お屋敷の若旦那

末娘がたどり着いた大きなお屋敷の若旦那。姥皮を脱いだ娘の姿を見てしまい、以来恋煩いになってしまう。

あらすじ
旱魃を解決した沼の主蛇に嫁に入るが、娘は蛇を倒す


お婆さんの姿になってお屋敷に雇われ、そこの息子と結ばれる

はじまり、はじまり…

「姥皮」物語

むかしむかし、田んぼをたくさん持った父様とさまがいました。毎朝田んぼの水を見に行くのがならわしでしたが、ある年は干照りが続いて、いつ行ってみてもヒビが入るほどカラカラに乾いていました。

その近くには沼があり、父様はある朝その沼の周りを歩きながらこんな独り言を言いました。

父様

おれは娘を3人持っているが、あのかわいた田に水をかけてくれたら一人嫁にやるんだけれどなぁ…

すると、次の朝行ってみた時には、田んぼにはたっぷりと水がかかっているではありませんか。

父様

こりゃ大変だ!

父様

田んぼに水が掛ったのはありがたいが、沼の主蛇に娘を一人くれてやらにゃならんということじゃないか…

父様は、そう思うと心配で心配で夜も寝られなくなりました。

朝になっても起きる元気が出ず、ずっと布団から起きてこられなかった父様を、、一番上の娘が呼びに来ました。

長女

お父様、いつまで寝ているのです?早く起きてごはんを食べてください。

父様

心配事があって、飯も何も喉へ通りそうにないんだ…

長女

何がそんなに心配なんです?

父様

それが…かくかくしかじか…

父様

…そういうわけだから、おまえ、沼の主のところへお嫁に行ってくれないか

長女

はあ…私たちのお父様のほど馬鹿な人は他にいませんね。

長女は父様の言った事を相手にもしませんでした。今度は2番目の娘が呼びに来たので

次女

お父様、ご飯食べて。早く片付けたいの。

さっきのように話をしてみましたが、これも姉さんと同じでまるで相手にしてくれません。

次女

何を馬鹿なことを。かわいい娘をヘビにやる親がどこにいるんですか。

今度は3番目の娘が呼びに来ましたので、父様はまた同じように話をしました。

父様

おまえ、嫁に行ってくれないか。

末娘

父様の言うことなら何でも聞くけれど、その代わり私の言うことも聞いてください。

3番目の娘は、父様の言うことを聞いてくれました。

末娘

嫁入りの時、水とり玉と針千本とが欲しいのです。買って下さい。

それを聞いた父様はやっと安心したので、起きて飯を食べました。

3番目の娘は水とり玉と火とり玉と針千本を持って、馬に乗り沼の主のところへ嫁にもらわれていきました。

いよいよ沼のところへついて馬から降りると水とり玉を沼の中に投げ込みました。

すると見ている間に水がひいていきます。沼の主が姿を現しました。

しかし娘は休むことなく針千本をぱらっと撒きます。沼の主に刺さったので、痛がってゴロンゴロンと暴れまわりました。

次には火とり玉をぶーんと投げますと、そこら一面が火になって燃えてしまい、とうとう娘だけがそこに残りました。

末娘

…ふう

末娘

万事うまくいったわ。…でもこれからどうしようかしら…

末娘がぼんやり立っていると、そこへぴたらぴたらと一匹の蛙がはねてきました

姉さま姉さま、どうしてこんなところで一人で立っているのです?

末娘

それが…かくかくしかじか…

末娘

―と、いう事なの。このへんで私を使ってくれるところはないかしら。

そんな、姉様のようなきれいな恰好をしてると輩に襲われちまいますよ。

この姥皮を差し上げますから、これを着てあっちの村のほうへ行ってみたらいいと思いますよ。

末娘

ありがとう。着てみるわね…

娘が蛙の差し出した姥皮を着てみると、

末娘

わっ!

末娘

これなら確かに若くて綺麗な恰好をしているより安全ね…

腰の曲がった老婆になりました。

老婆の姿になった娘は、村の大きな家で雇ってもらうことに…

さて、娘は村の方へ下って行って、ここなら使ってくれるだろうという大きな家に行きました。

末娘

庭掃きでもなんでもいいから私を使ってくれませんかね

使用人

旦那さま、こんな婆さんが庭掃きにでも雇って下さいと来てるんですが…

旦那様

ふむ。腰も曲がっているし、庭掃きにはちょうどいいだろう

無事雇ってくれることになり、庭の片隅に部屋もこしらえてもらえることになりました。

末娘

ありがたいねぇ

末娘

…ふう。この部屋なら誰もいないし、脱いでもいいわよね。せっかく静かだし、夜はあかりをつけて本でも読むことにしましょう。

ある晩、お屋敷の若旦那が夜遅くに帰ってきました。

若旦那

ただいま~っと。

若旦那

おや、あそこの部屋は新しく雇われた庭掃きの婆様の部屋のはずだが。年寄りがこんな遅くまで明かりをつけてるなんて、妙だな…。

若旦那が変だと思って部屋を覗き込んでみると、きれいな姉様あねさまが本を読んでいるのが見えました。

末娘

(ぺら ぺら)

若旦那

!?

若旦那

…いや、たぶん疲れてるんだ。今日はもう寝よう。

次の夜もまた覗き込んでみましたが、やっぱり同じように美しい女性が本を読んでいます。

若旦那

まぼろしではなかったのか…

若旦那

(しかし、おかしいこともあるものだ。まさか、あの庭掃きの婆様は狸や狐じゃないだろうが、いったいどうしたことだろうか)

それから、若旦那はその美しい姉さまのことが忘れられず、そのことばかり考えて食べ物も喉に通らなくなり、とうとう病気になって床についてしまいました。

使用人

若旦那さま、食べやすいものを準備しましたから、どうか召し上がってくださいな

使用人

若旦那ぁ、旦那の好きなもの作らせたんですよぅ

母様

のう、どうか一口だけでも食べてくれんかね…

代わるかわるお膳を持っていっては、若旦那に勧めますが、誰が言っても見向きもしません。

使用人

このまま何も食べなければ若旦那は死んじまいますよ

旦那様

誰か、あいつの気に入る者はおらんのか…

使用人

あと残ってるのは、庭掃きの婆様だけですよ

旦那様

ではあの婆様に膳を運ばせてみよう

奥方

婆様に?母である私が勧めても食べなかったのに、あんな婆様の持って行ったものが気に入るはずもないですよ

旦那様

しかしな、ものは試しということがあるだろう。

末娘

なんだか変なことになってしまったけど、要するに若旦那にご飯を食べさせたらいいってことね

そこで婆様は姥皮を脱いで風呂に入ってちゃんと身支度をし、びっくりするくらい綺麗な女性の姿になりました。
そうして、若旦那の部屋にお膳を持っていきました。

若旦那さま、御膳をお持ちしました。

若旦那

下げてくれていいよ。何も喉へ通りそうにないんだ…

末娘

心配ごとがおありでしたら、お話しうかがいますわ。私の父も似たようになったことがありましたけれど、話を聞いて解決したことがありますので

若旦那

!君は…!

こうして、若旦那はにっこり笑って喜んでご飯を食べました。旦那様は、若旦那様がこの娘のことが好きだったということがわかりましたので、さっそくおめでたい結婚のお祝いをしました。

それでこの家もますます栄えたということです。

おしまい、おしまい。

アンケート


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補足や資料

元の採集場所や文献
制作者が参考にした文献…たぶん柳田國男「日本の昔話」…(また追記します)

他の蛇聟譚・水乞い型では、姉妹たち断る場面が「ヘビの嫁になるなんて、絶対に嫌だ(圧倒的拒否)」という表現が多い印象だったのですが、このお話しはあくまで「相手にしない」という雰囲気だったのがちょっと印象的でした。

このお話は娘に姥皮をもたらしたのが蛙で、これはいわゆる「蛙報恩型」の名残(?)なのでしょうが、冒頭に「ヘビに襲われている蛙を助ける」といったくだりはなかったので「蛙報恩型」タグは付けませんでした。

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