このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「登場人物紹介」「あらすじ」「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
「常陸国風土記 夜刀神伝承」おもな登場人物
登場人物(登場順に紹介)
箭括氏麻多智(やはずうじのまたち)
行方郡と呼ばれるようになる土地で開墾を始めた青年。夜刀神に怒りを爆発させて退散させ、人間と夜刀の神の境を決めて社に祀る。
夜刀神(やつのかみ/やとのかみ)
頭にツノを持つ、蛇の姿の神。見るとその一族は絶えてしまうとして恐れられている。
壬生連麿(みぶのむらじ まろ)
麻多智の世代よりもっと後の世の、行方郡の役人。池を造ろうとするが夜刀神に邪魔をされ、夜刀神たちを駆逐するように号令をかける。
「常陸国風土記 夜刀の神伝承」あらすじ
「行方郡」の地を、箭括氏麻多智の先導で開墾しようとしたところ、「夜刀の神(ヤトノカミ/ヤツノカミ)」という角のある蛇神の群れに攻め入られ、開墾が進まなくなる。夜刀神は角を持つ蛇の姿をしており、見ると一家もろとも滅亡してしまうということで恐れられていた。麻多智は怒り、夜刀神たちを打ち殺して、残った夜刀神たちを山に追いやる。
そして山の境に社を置き、神の地と人間の地との境を決める杭を打ち込み、夜刀神を封じ永代まで祀ることを宣言する。
壬生連麻呂 対 夜刀神(孝徳天皇の時代)
後の世、壬生連麿という役人が谷に堤(池)を築こうとする。すると池の周りの椎の木株に夜刀神たちが昇り集まって、立ち去ろうとしなかった。
麿は大声で「これは民のための修築であり、王の仕事である!それに従わないのはどのような神であるか!」と叫び、工事で使役していた人々に「怖れることなく、目に見える虫魚類を全て打ち殺せ」と命令する。夜刀神はそれを聞いて逃げ去った。
そしてその池は「椎井の池」と名付けられた。
※以下トークノベルは、常陸国風土記夜刀神伝承の漢文読み下しと複数の解釈をもとに構成しなおしております。できるだけ平易にストーリーを伝えようと努めてはおりますが、もともとの情報が少ないため、ライター独自の解釈を紛れ込ませている部分が要所要所にあります。元のストーリーが気になる方はWikipediaにも該当の漢文読み下しが掲載されております。もし「この解釈は自分とは違う」と言う箇所があれば、それもコメントやSNSなどで教えていただけると嬉しいです。
はじまり、はじまり…
「常陸国風土記 夜刀神伝承」
むかしむかし、継体天皇が日本を治めていた時代。
箭括の氏「麻多智」という青年がおもだって、西の谷の草原を切り拓こうとしました。
ここに田んぼを作れば、俺たちの生活がもっと楽になるぞ!
しかし、その周辺に住んでいた「夜刀神」という蛇の神さまが、群れとなっておしよせてきました。
夜刀神とは蛇の姿をした神さまで、頭に角があり、それを見た人は一族もろとも途絶えてしまうという恐ろしい存在でした。
開墾の邪魔をされた麻多智は怒って、夜刀神たちを打ち殺していきました。
駆逐してやるッ!
そして夜刀神たちを山に追い払って、山と地上との境に杭を打って宣言しました。
この境より上の山は神の地だ!
そしてここから下は俺たち人間の田んぼにする!
今から後、この箭括の麻多智が子々孫々、夜刀神たちを祀る役割に就く!
どうか恨むことなきよう!祟ることなきよう!!
それから時代は下って、孝徳天皇の時代。
行方郡の役人であった壬生連麿という人が、谷に堤(池)を造ろうと計画していました。
この谷の池を整備して使いやすくすれば、この行方郡はもっと住みやすい村になるだろう
しかし、夜刀神たちが出てきて、谷の池の側にある椎の木のに昇り集まってきてしまいました。夜刀神たちはじっと居座って立ち去ろうとせず、工事にあたろうとしていた人々は怖がってしまい、なかなか着工できずにいました。
麿は大きな声を挙げて夜刀神たちに告げました。
この池を造るのは人々を広く救うためである!神であるにもかかわらずそれ従わないとはどういうことか!
目に見える魚虫の類はすべて打ち殺せ!怖れるな!!
麿の号令が終わると、夜刀神たちは立ち去っていきました。
そして、その池は椎井の池と名付けられました。
おしまい。
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補足
ほかにもお話しが読めるところ
→Wikipedia「夜刀神」
→日本の神様辞典やおよろず「夜刀神」
→龍学「夜刀の神」項
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