このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
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はじまり、はじまり…
「鷲の卵」物語
昔ある村に歳とった百姓がいました。百姓は、美しい1人の娘を持っていました。
ちっと田んぼを見てくる。夕方には戻るからの。
いってらっしゃい、お父さん。
田植えの頃に苗代を見回っていると、蛇が小さなカエルを追いかけて、苗代を荒らしているのが見えました。
蛇よ、そう追うな。俺の一人娘をお前にやるから
と言いますと、蛇はカエルを追うのを止めておとなしく帰っていきました。
そしてその晩から、立派な若い婿が娘の所へ、夜おそく来て朝早く帰るようになりました。
…なあ、あの聟どのはどういう人なんじゃ?どこからきてどこへ帰っとるんかの?
さあ?無口なお人だから、私もよくわからないわ
むむむ…。娘は気に入っておるようじゃが、やっぱり心配じゃ…。
ある日、家の前を1人の見たことがない易者が通っていくのを見かけたお百姓は、それを呼び込んで占いをしてもらいました。
その易者が言うには、
…この娘の聟どのはただの人間でないようです。
娘さんにはいま人間でないものの子が宿っておるようです。そのため近いうちに死ぬかもしれません…。
なんじゃて!どうにか…助かる方法はないのか!
たった1つだけあります。
裏の山の大木の上に、鷲が巣をかけて今卵を3つ産んでいます。。あれをその聟殿に頼んで、とってきてもらって食べさせてみたらよいでしょう。
おじいさんは、その晩に来た聟に頼みました。
いらっしゃい、聟どの。なあ、お若いあんたに頼みがあるんじゃが…。
なんでしょうか。
裏の山の大木にある鷲の巣には卵を3つ産んでおるらしくての。
娘に食べさせて精をつけさせてやりたいんじゃ。
明日、一緒に行って採ってもらえんかの。
あそこの木の上にワシの卵が3つある
わかりました
聟は快く承知し、蛇の姿に変身しました。
!「人間ではないもの」というのは、蛇じゃったんか…
そして2つの卵を口にくわえてきて、3つ目を取りに登ったときに、鷲の親に気づかれてしまいました。
鷲の親はその大蛇を突いて殺してしまいました。
百姓が家に帰ると、昨日の易者がまた来ていました。
おまえさんが言った通りだったよ!
かくかく、しかじか…
それではもう娘さんは助かりました。この後では3月3日の節句に、酒の中へ桃の花を浮かせてお飲ませなさい。そうすればいよいよ丈夫になります。
ああ、ありがてぇありがてえ…
あんた本当によくしてくれた
何かお礼をせにゃならんのう。何がいいかの。
その話を聞いた易者は、首を横に振りました。
いえいえ、礼にはおよびません。
私はあなたに命を助けられた小さなカエルです。ほんの御恩返しです。
と言って、かえるの姿になり、ぴょんぴょんとどこかへ飛んでいきました。
それから後は3月の3日に、人が桃の酒を飲むようになったのだそうであります。
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補足や資料
元の採集場所や文献 | 佐賀県杵島郡「民族」三ノ三 |
制作者が参考にした文献 | 柳田国男「日本の昔話」角川ソフィア文庫 pp.43-44 |