宮古島に祀られている2人の少女は蛇神の子―狩俣の蛇神の子

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このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。

※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。

はじまり、はじまり…

「狩俣の蛇神の子」物語

話し手

宮古の北極星ニヌファのほうに、狩俣ちゅうところがあるんですよ。

狩俣のほうの、子・牛・寅の十二支のうちのニヌファです。

そのニヌファに、神とされているきれいな女の人がいました。その人は、旦那さんもいないのに、なんだか毎日毎日、おなかが大きくなってきました。

旦那さんもいないのに、どうしておなかが大きくなるんだろうか?

妊娠だろうか?

と心配しているうちに、

夜、たまたまきれいな男の人が現われて

来ても何をするというわけじゃないんだけど、おなかはどんどん大きくなるの…

女の人は悩んだ末、

よし、子どもが生まれたら、いちばん最初に会う人をこの子たちのお父さんという事に決めましょう

と、つくづく考えた末に、そう決めました。

すると、思っていたより二か月も早く子どもは生まれてきました。

生まれた子は、2人の女の子でした。

娘のむすめ

あんまーおかあさん、何つくってる?

娘のむすめ

あんまーおかあさんまーさんどーおいしいものつくってる?

そう。今日はご馳走をいっぱいつくって、お出かけしようね

ある日、娘はご馳走を沢山つくって頭に載せて、その子たちを二人つれて、どこでもいいからと足の赴くまま歩きました。

そうしたら、大きな蛇が高い山に尻尾を垂れて横たわって、こちらを見ているのがわかりました。

あれは…

娘のむすめ

… … …

娘のむすめ

… … …

そうしてしばらく、じいっとこちらを見つめているうちに…

涙がぽろんぽろんと蛇の目から落ちていたそうです。

(これはきっと、この子たちのお父さんだね…)

あなたはこれの親じゃないのか?

と聞きました。

… … …

すると、子どもたちはふうっと降りて行って、一人は首のほうに抱き着いて、もう一人は尻尾の方に抱き着いて泣いていたそうです。

娘のむすめ

…っ

娘のむすめ

…っ

話し手

…それで、狩俣のほうにあるニノファノマキダという御嶽うたきには、その女の子二人が祀られているそうよ。

おしまい。

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補足や資料

元の採集場所や文献〇伝承地 沖縄宮古郡城辺町下北
(『沖縄の昔話』)
制作者が参考にした文献日本伝説体系 第15巻 pp.223-224


このお話は、参考にした元資料では主語がないものが多く、使われている言葉自体調べてもすぐにはわからないものも多く、解釈に苦しみました。一般的な蛇聟譚や、同じく宮古島に伝わる蛇聟譚:苧環型の様相を呈している「漲水の蛇神の子」のお話とは違って、この『綺麗な娘』に親の姿があるように読み取れませんでした。また、やはり一般的な(日本の)異類聟譚が『妊娠の原因となった謎の男の正体が知りたい』という、ある意味人間のすなおな気持ちを反映した行動をとるのに対し、このお話の娘(と、その周囲の人間たち)はそういったことをせず、もっと大きな流れに身をゆだねるような行動をします。そして、参考文献で紹介されている類話には、娘が『豊見赤星天太ナフラ真主と申す女神』であるとか『(名前は明言されていないが、とにかく)女神』であると書かれているものが多かったため、それらを踏まえて当コラムは「子どもを妊娠した娘じたいに、神がかり的な力があったゆえ、ある意味”天命に任せる”といった決意ができた」という解釈に着地しています。

ニノファノマキダに祀られているのは、「その女の子2人」だけで、父親である蛇神は祀られてないのか?と気になりながら作りました。…ら、しばらくして非常に興味深い島村恭則先生の資料を発見しました。またコラムの方で触れたいと思います。(簡単に言うと、島村先生が1900年代に宮古島でフィールドワークされていた時に判明したお話で、力ある神人さんが蛇神からの声を聴いて「なんでずっと娘しか祀らないのか。私も祀ってほしい」と言われたから最近祀りだした、という経緯があったようです。つまり長い間女の子二人だけを祀っていたけれど、今では女の子二人と蛇神を祀っているそうです。多くの信仰者さんたちは『むかしから3人祀っている』と思っている、というところがミソだと思いました。←なので島村先生のちょっとした深堀によって判明したのが非常に貴重なお話だと思いました。)

島村先生より、このあたりの記載のある書籍とその内容も教えて頂きました。

「宮古島」の写真素材も充実

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