水引きの代わりに娘を貰い、人間になって結ばれ、親孝行な夫婦になった蛇の婿

  • ブックマーク
  • Feedly
  • -
    コピー

このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。

※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。

はじまり、はじまり…

「蛇婿入り・転生婚姻譚」物語

この田んぼに、夏、水がなくなってしまって米ができないということがありました。

ある日お父さんが田んぼを見に行ったら、

お父さん

ああ、もう田んぼが干上がってしまっとる…

ひょっとそこを見ると、水口にあの、大きな蛇がいました。

お父さん

お前、こんなとこにいるんだったら、うちの田んぼに水あててくれんかの?そしたら、うちにおる三人娘のうち、好きなやつをひとりやるからの…

そう言うと、蛇は水を出して田んぼに水を引きました。


そして、するするっとその陰に消えて行ってしまいました。

―その晩―

きれいな男性

――御免

お父さん

あんたは…!

きれいな男性

わしは昼間のヘビじゃ。約束通り、娘さんもらいに来た。

きれいな男の人が、娘をもらいに一家の家までやってきました。

お父さんは昼間のできごとを3人の娘に話しました。すると、一番上の姉さんは

一番上の娘

私はそんな蛇の嫁にはならん!

と言い、2番目の娘も

真ん中の娘

私も、そんな蛇の嫁になるくらいなら、誰の嫁さんにもならん!

といって、逃げてしまいました。

それを聞いた一番小さい妹が、

末娘

そんな事言うたらお父さんが困る。

と言って、覚悟して、

末娘

――蛇でもしかたない。私、お父さんの犠牲になって、嫁に行く。

と言いました。

そうして、箱の中に入れられて、そのたんぼのねき・ ・まで晩に持っていってもらいました。

そうすると、その大きな蛇が出てきて、そうして娘の入った箱をしっぽでべんべんと割って、中から娘を出しました。

末娘

ひっ…

――怖がらんでええ。

わしは、魔法にかけられとるんだ。お前がわしの首筋のとこを割ってさえくれたら、さっき訪ねていったあの男の姿に戻れる。

ですので、娘はかんざしを抜いて、その蛇の首を突き破りました。

そうすると、そこから若者が出てきました。

蛇だった男

―――

末娘

そうして、その人のまあ幸福な結婚をしたそうです。

まあ、それは親は「孝行だった」と言っていましたから、その夫婦はさぞかし親孝行したのでしょう。

おしまい、おしまい。

アンケート


●前の回答を見る→他の方の回答を閲覧することができます。
●回答を編集する→回答の訂正ができます。

※このアンケートに回答するのみで、回答者様の位置情報やメールアドレスが判明することはありません。(→プライバシーポリシー

補足や資料

元の採集場所や文献京都府竹野郡弥栄町中津・羽賀ゆわ(大谷女子大学説話文学研究会『弥栄町昔話集』〈蛇聟入・水乞い型〉)
制作者が参考にした文献「奄美文化を探る」 福田晃『水乞い型蛇婿入りの古層ー南島の伝承を基軸に― 』pp.125-126


竹野郡たけのぐん…京都府(丹後国)にあった郡。
1897年(明治12年)に行政区画として発足した当時の郡域は、京丹後市の一部(網野町各町・丹後町各町・弥栄町和田野・弥栄町木橋・弥栄町鳥取・弥栄町吉沢・弥栄町芋野・弥栄町堤・弥栄町溝谷・弥栄町等楽寺・弥栄町黒部・弥栄町船木・弥栄町国久・弥栄町井辺・弥栄町小田)にあたる。古くは「たかのぐん」とも。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E9%87%8E%E9%83%A1_(%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C)

ヘビが「綺麗な男の姿」になって娘をもらいに来ておいて、末娘が箱に入ってたんぼのねきに放置され、また蛇の姿になって登場する必要があったのか…?など、ところどころに混乱が見られる。そういったことを補足しつつ、福田晃氏はこの類話を「蛇聟入・転生婚姻譚」と称すべき本格昔話として「わが国には類話例が少ない、いわゆる〔美女と野獣〕パターンに属する本格昔話」であるとする。この話型は多くはないと断りつつ、続いて福井地方と島根県に伝わる伝承事例を挙げる。(「奄美文化を探る」p.126)

  • ブックマーク
  • Feedly
  • -
    コピー