このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。
はじまり、はじまり…
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「甲賀三郎」物語
昔、甲賀太郎、次郎、三郎という兄弟がいました。
三男の三郎には、それはそれは美しい春日姫という名の妻がいました。
この見目よい妻をもつ三郎をうらやんだのが太郎、次郎の兄たちでした。
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ああ、三郎の奴がうらやましい妬ましい。
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何とかしてあいつを不幸にしたい…
兄たちは企みをめぐらしました。
そこである日蓼科山に誘い、うんと深いと言われている人穴の縁に連れてきました。
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こんなところに何があるんだ、兄さん?
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それがよ、この穴ん中にはよ、目もくらみそうな宝玉があるんだと。
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俺たちは、まぁ、意気地がなくってさ。けど三郎は勇ましいだろ?そこでひとつ、そに宝玉を取ってきほしくてな。
兄たちが口をそろえて言うものですから、三郎は兄たちが用意した藤蔓につかまって、深い深い人穴にそろりそろりと下り行りました。
穴の上では太郎が次郎に目くばせすると、二人はいっきに藤蔓を切ってしまった。
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うぁぁあぁぁぁぁ!!!
三郎は藤蔓をにぎったまま、あっというまに奈落の底へと落ちていきました。
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三郎さまが人穴に…!?
それを知った春日姫は、悲しみのあまり人穴の縁にたたずみひたすら叫びました。
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三郎さま、三郎さまぁ!
そのうち春日姫は自ら人穴へ飛び込んでしまいました。
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人穴深く落ちた三郎は、すり傷ぐらいで命は助かりました。
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俺は生きてるのか…くそ、兄貴たちにはまんまと謀られたというわけか…。
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あぁ、早くこの真暗闇からぬけ出したい、妻はどんなにか心配しているだろう。
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いとしい妻に会いたい…会いたい。
そう念じながら、三郎は闇の中を彷徨いました。
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ある時、眠りから覚めた三郎がふっと上の方を見たらば微かな光を感じました。
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あっ、ひ、ひ、光だ。地上の光だ!
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三郎が出た所は御代田町真楽寺の大沼でした。ほっとして自分の体をながめると、な、なんと、三郎は鱗で包まれ大蛇の姿になっていることに気が付きました。
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!?
三郎はじっとしていられなくて、とにかく蓼科山をめざすことにしました。
三郎は近津の森(佐久市)に来て後ろを振り返って見ました。しかし尾はまだ池から出きっていませんでした。
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まだ近い
三郎がそう言って前に進んだこと、これから近津の名は出たそうです。
さらに南をめざして三郎は進みました。そして、とうとう蓼科山の峯まで来てしまいました。けれど尾は前山(佐久市)の貞祥寺の松の枝にたれていたそうです。貞祥寺の山号を尾垂山というのはこのことから来ているのだとか。
そうして、三郎はついに諏訪に至り諏訪明神になりました。
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また一方、三郎の後を追って人穴に入った春日姫ですが、三郎を見つけることができないまま、真楽寺の大沼の池の東南13町(約1400m)ほどの所にある湧玉の池(池ではなく小堰ほどの所だが水はこんこんと玉のように湧く)に出ました。身は三郎と同じく全身鱗で包まれた蛇になっていたそうです。
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蛇身の春日姫は妙義山をめがけて進んだそうです。三郎とは違う方向ですから、とうとう二人はめぐり会えなかったようです。
おしまい、おしまい。
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舞台のマップや補足など
元の採集場所や文献 | 下リンク先より |
制作者が参考にした文献 | 週刊上田『甲賀三郎伝承3つ(その1) |
お話中に尾垂山の名前の由来ととれる記述がありましたが、Wikipedia貞祥寺項には「貞祥寺の山号を尾垂山とする説があるが貞祥寺の建立は1521年であり、甲賀三郎伝説とは時代に整合性がなく間違いである。かつて貞祥寺の南にあり廃寺となった尾垂山 龍覚寺と取り違えたと思われる。」との記述もありました。こちらも出典がないため参考までに記します。