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このWEBコラムでは、泉鏡花の戯曲『海神別荘』を「登場人物紹介」「あらすじ」「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物イラストや挿絵イラストはイメージです。
原文そのままでチャットノベル化したコンテンツもご用意しております。
※「海神別荘」は著作権フリーとなったコンテンツで、青空文庫にも収録されています。
「海神別荘」登場人物
登場人物(登場順に紹介)
僧都(そうず)
公子の教師。その本性は年老いた海坊主。碇をさかさまにした細い鉄杖をつく。今回の婚儀において、美女の親元に魚介や珊瑚など海の財宝を贈る手配を行い、その目録を読み上げるが、途中で間違えて侍女達にからかわれる一幕も。
侍女(1~7人)
公子に仕えるお腰元衆(貴人のそば近く仕えて身辺の雑用をする人々)。新夫人を引き立てるべく何れも洋装に身を包んでいるが、望めばたちまち姿や装束を変える事が出来る。またその身は雲のごとく柔らかく、鮫に噛みつかれても血にも肉にも障りがない。
(海の貴)公子
海神の世継ぎであり、その本性は毒竜。姉は乙姫。「面玉のごとく臈丈たり」=イケメン。やや傲慢ではあるが、弱者を庇護する者としての意識を持つ。激情家でもあり、意に添わぬ事があると癇癪を起こす。
女房
侍女長。美女を迎えに行って連れてくる役割を担っている。「一人下髪。旅扮装。素足、小袿に褄端折りて、片手に市女笠を携え、片手に蓮華燈籠を提ぐ」
(陸の)美女
公子に見初められた人間の女。莫大な宝物に目のくらんだ両親により、人柱として海に捧げられた。故郷と両親を想うあまりにもう一度海の上に出たいと願うが既に人ならざるものへと変化しており、これを嘆いた事で公子の勘気をこうむってしまう。遂には命の危機にまで発展するが…
黒潮騎士
公子に仕える黒甲冑の戦士達。花嫁道中の警護に当たる。
博士
終盤に登場。紆余曲折の末に夫婦の誓いを結んだ公子と美女が盃を交わした折、故郷に咲いた美しい花の正体について説明する。
参考…Pixiv百科
※キャラクターはあくまでイメージです。
「海神別荘」あらすじ
↓をタップすると開きます。
公子と美女の価値観の違いなどが浮かび上がってくる。美女、蛇になった(人の目からは蛇にしか見られない体になった)ことを悲しむが、
※以下トークノベルは、青空文庫の「海神別荘」と複数の解釈をもとに構成しなおしております。しかし、最終的にはライター独自の解釈(読み)による翻案になってしまうことをご了承ください。
「海神別荘」はじまり、はじまり…
身が引きしまるようにおごそかな翡翠の玉の御屋敷に、黒い影があった。
屋敷の広間にて、年老いた海坊主が侍女を呼ぶ声が響く。
おぉい、お腰元衆や
(お腰元衆…貴人のそば近く仕えて身辺の雑用をする人々。)
海坊主の呼ぶ声に応えて、淡い色のドレスをまとったがドアから出てきた。
はい、はーい。お坊様。
これはこれは、なんとも美しい、変わった格好でございますな。
まあ、御挨拶でございます。美しいかどうかは存じませんけれど…変わった格好には間違いないですわ。若様のかねてのお望みが叶かないまして、今夜お輿入がございますの。
若奥様が、日本髪とお振袖をなさるとおっしゃいましたから、私わたくしどもは、余計そのお姿のお目立つように、皆してこのように申合せましたのでございます。
はあ、さてもお似合いじゃが、どこの海の文化じゃろうな。
御僧こそ、なんども海の上へ行かれるのですからよく御存じでしょう?
いやいや。いや、わしが荒海を切って海上に姿を現すのは暴風雨の時ばかりじゃから、もちろんほとんどが闇夜なのでな、見えるのは沈んだ幽霊船に死骸がうごめいているような裸ばかりじゃよ。美しい女性の衣装などはほとんど見た事がないのじゃ。 とはいっても小僧の頃は、青い炎の息を吐いて、色の白い奴はないか、袖が紅いのはないかと、船倉や船のすきま、帆柱の根元、錨綱の下までも、探し求めたけれども、小さい子供時代はともかく、年とった僧都となった今は、久しく女性の事を気にかけていないゆえ、全く分からないのじゃよ。
侍女は笑いながら言った。
お精進なことですわ。
見てくださいませ、これは、桜貝、タカラ貝、いろいろの貝を飾りにしておりますの。
花の波が白く咲いたようなその渚を、青い山、緑の小松に包まれて、大陸の婦たちが、夏の頃、百合、桔梗、月見草、夕顔の雪の装などして、旭の光、月影に、遥に姿を映しました。眺めていて、なんとも風情で美しいと思いましたものでございますから、私どもみんな今夜はこの服装に揃えたのですわ。
そして、高い高い碧瑠璃の天井を見上げながら、僧都に装いを見せた。その髪は艶やかにしなった。
うむ、お見事じゃ。が、朝に御機嫌伺いに出ました節は、御殿、お腰元衆、いずれも普段着でございました。
その時は、今宵あの美女がこれへ輿入の儀はまだ済んでおらなんだ。ただでさえ人間は決断が遅いのに……日頃の訓練がなっておるのか、いやはや、よく装いが間に合いましたな。
まあ、お坊様。わたくしたちはみんな、この玉のような肌は、白い尾花の穂を散らした、山々の秋の錦が水に映るように、こうと思えば、思うまま、身のよそおいの出来ます体でございますことを、あなた様はお忘れなさいましたか。
あなた様とて違いはしません。緋の法衣を着ようと思えばそうなります。右左、峯に、ひともと燃立つような紅いお姿に。
ま、ま、分った。
僧都は、腰をかがめながら、侍女の言葉を制するように手を挙げた。
何とも申し訳のない。海での暮らしのありがたさに慣れて、心のまま、たちどころに身の装いができる事を忘れておりましたな。
しかし、この僧都の格好は闇夜こそよけれども、なまじ緋色の衣など纏おうものならばやれ「ずぶぬれの提灯じゃ」「迷ったエイじゃ」などと言わることでしょう。無理にすることではありませぬな。
僧都は、細く丈の長い黒鉄でできたような錨を逆さまに倒した形の杖を軽く突き直した。
いやはや、こうしておると若様への用まで忘れてしまう。若様へお取次を頼みましょ。
かしこまりました、ただいま。
そう言うと、侍女は右のドアを推して広間から出て行った。
僧都は、一人残った広間で、杖を抱いたまま室内を見回した。
はあ、ほんにそうの通りじゃ。衣の袖の下に春がそよいでおる。
そうして、そのままうとうととただずんでいたところ…
ばたんっ
黒髪を背に流した貴公子が扉を開けて部屋に入ってきた。貴公子の顔は玉のごとき輝きを放っており、背は高かった。
公子は青地錦の直垂、黄金づくりの剣を携え、端然として言った。
爺い、ここにいるのか。
公子の後ろからは、先ほどまで僧都と話していた侍女を筆頭に、五人の侍女たちがすらすらと従い出てきた。
いずれもドレスをまとっていて、もっとも年の若い侍女は五番目に出てきた侍女だった。
二人は床の上、公子の背後に。
二人は床を下りて僧都の前に。
先ほど僧都と話していた第一の侍女はその背に立った。
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