このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。
はじまり、はじまり…
「漲水の蛇神の子」物語
昔むかし、
平良の「南の底」というところに――宮古口で言うと、パイヌスゥクに――
とても美しい14、5歳の娘がいたそうです。
だけれど、いつしかその娘のおなかが大きくなっているものですから、娘の母親はまあ心配して、
どうしてお前のお腹は大きくなっているのか。父親は誰なんだい?
と聞きました。すると娘は
実は、私もこの子の父親が誰なのか知らないの
あなたは誰なの?
… … …
…と、聞いても名前も言わず、どこから来ているとも話さないの。でも、とても美しい青年で…毎晩しのんで来ているのを迎えているうちに、知らないうちに、お腹が大きくなってたの。
と言うので、母親も父親も心配して、
じゃ、来たら千尋の糸を針に通して、わたしが渡すから、男が来たらそれの欹髻に、針と糸を刺して行かせなさい
いいか。針に糸を通すから、頭に指して行かせるんだよ。
と言いました。
―その晩-
んみゃーち
… … …
その娘は、母と父が言ったことを忘れずに、その晩やってきた男の頭に針を刺して行かせておきました。
(糸を通した針を頭のお団子に指して行かせて、それをたどれば、この人がどこから来ているのかわかる…)
そして翌朝。
お父ちゃんとお母ちゃんがその糸の通っているところをたどっていくと、深い洞穴へ入っていった跡がありました。
そこにはまあ、5メートルくらいの大蛇がよこたわっていました。
! ! !
! ! !
! ! !
まあ娘はびっくりして、お父ちゃんもお母ちゃんもびっくりして、しばらくそこに立っていました。
ようやく落ち着いてきて自分の家に帰ってきたみんなは、
ど、どうしようか…?
どうしようも何も… ああ、 どうしようかね…
と心配していました。
その晩は、その美しい若者は来ませんでした。
その晩。
娘は夢を見ました。
――お前は、やがて女の子を三人産むはずだ。
それが成長して、三年たったら、満三年たったら、
あのツカサヤ―に連れてきなさい――
―――…
そして、旧暦の三月巳の日に、娘は臨月を迎え――
浜の七か所、の七か所、七浜七干瀬を娘に踏ませて、海の潮を汲んできて、その娘に水を浴びせました。
すると、生み月の3月になると、女の子が三人生まれたそうです。
その子たちは3年、まぁすくすくと成長して大きくなりました。
なので、満3年目になると、あの夢の仰せの通りにツカサヤ―に行きました。
すると、もう太陽と言おうか、お月様と言おうか、そんな目をしたとても大きな蛇が出てきました。
ひぃぃっ
うううっ
あっ、お前たち…
…っ
…っ
…っ
お母さんとお父さんはとてもその蛇をとても恐れましたが、三人の子どもはまったく恐れる様子がありません。
駆け寄って行って、頭にとりすがる子、銅に抱きつく子、尻尾に抱きつく子…
三歳の女の子3人は、しばらく愛しげにしていました。
蛇の方も、まあ愛しげにして、大きい声でうなり、ツカサヤ―の岩の上に頭を載せて、胴をイビに載せて…
離しがたいような、親子の愛情深げに涙をこぼしていたそうです。
しばらくそのままでいて、その蛇は天へのぼっていきました。
また、子どもたち3人は、神社内に入っていき…
そのままいなくなって、全然見つからないそうです。
おしまい。
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補足など
元の採集場所や文献 | 宮古・城辺町の昔話稿 |
制作者が参考にした文献 | 日本伝説体系第15巻 pp.227-229(64.「漲水の蛇神の子」) |
干瀬…沖縄・奄美でのサンゴ礁の地形名称、といった説明があり、那覇方言を中心にすると干潮のときにあらわれる岩や州のこと、といった説明があるようです。このお話では八重干瀬の写真をもとに画像作成いたしました。(参考:レファレンス共同データベース)
女の子たちは「3歳」ということでしたが、イラストが用意できず、3歳よりは大きい子のイメージになってしまいました。脳内補完お願いします…。