【鳥取県赤松池】心霊スポットに伝わる2つの大蛇伝説と現代実話怪談と

  • ブックマーク
  • Feedly
  • -
    コピー

鳥取県西伯郡大山町赤松「赤松池」に伝わる大蛇のお話しは「伯耆の昔話」を読んでいて見つけたものです。こちらにおさめられている語りは短くて、いかんせん謎が多くて、それが非常に魅力的に感じました。

そう思ってこの「赤松池」を調べてみると、ここはもう一つの有名な大蛇伝説があることや、心霊スポットとしても有名であることを知りました。


このコラムでは、「蛇物語百」で扱わなかったもう一つの大蛇伝説のカンタンな紹介と、現代この赤松池で語られている心霊現象にはどんなものがあるのか、「蛇物語百」でトークノベル化した大蛇伝説のほうのさまざまな妄想などを繰り広げてみたいと思います。よければお付き合いください。

2つのお話あらすじ ①「お初」赤松大明神伝説 ②僧侶と姫大蛇化入水伝承~

①「お初」赤松大明神伝説あらすじ

松江の殿に仕える家老、赤松池大明神へ祈願し子どもを授かる。

松江の殿に仕える松浦瀬母まつうら たのもという家老、日頃から子供が欲しいと願い、「霊験あらたかな赤松池大明神にお参り」したところ、女の子が生まれたので『お初』と名づける。

美しく育ったお初は藩主に見初められ、召し上げられることに。お初は輿入り前に赤松池に行くよう望む。

お初は評判の美しい娘に成長。藩主松平候の目にとまり、妻に欲しいと要望される。藩主の要望は断れないとして両親はお初の嫁入りを承諾。お初は悲しむが「お城へ召す前に、私が生まれるように祈っていただいた赤松池大明神へお参りさせてください。」と願う。

赤松池に消えるお初。半蛇体になりもう一度姿を見せる。

赤松池に行ったお初は乳母の勧めで池の水に髪をつける。すると、一くしすくごとにだんだんと髪が長くなり、水面を覆う。そうしてお初は岸を離れて水面の上を歩き、池の中心まで行きつくと大渦巻と共に水中に沈む。

共にいたお侍や乳母が驚き祈ったところ、再び大渦巻が起こり、腰から下を蛇に変えたお初が現れる。そうして、自分が赤松池にすむ大蛇であったこと・頼母の願いの強さを受けて人間に姿を変え、人の世に身をおいていたこと・育ててくれた礼などを述べる。そうして「これから先、私に祈りをささげる人には、かならず幸福を与えましょう。」と言い遺し、水中に沈み二度と姿を現わさなかった。

(鳥取県公式ウェブサイト赤松の池より要約)

今日の赤松池神社‐旧暦6月18日の例祭

それより後、松江市北堀町にある松浦家では、お初が蛇にもどった旧暦六月十八日に、大広間に八枚の屏風を立て、たらいに水を入れておくと、お初が訪れたしるしとして、たらいの中に多くの砂が沈んでいたといいます。

 また、赤松池の半島に祠があり、御神体としてお初の像が奉られており、赤松池神社では同じ日に例祭が行われています。お初は今でも龍神としての信仰を集めて幸福を願う人々や千ばつの年には雨ごいの祈願をする人々が、遠方からもお参りに来られます。(引用:鳥取県公式ウェブサイト赤松の池より)

そして次が、私が「伯耆の昔話」という書籍を読んでいて見つけたお話です。

②僧侶と姫大蛇化入水伝承あらすじ

大山の寺に住む美形の僧侶と、松江に住む評判の良い姫がいた。

大山の寺(詳細は不明)に美しい僧侶がいた。その僧侶は毎晩赤松池に通っては、そこに体を沈めているようで、いつも僧侶の草履は水で濡れていた。

松江に、評判のよい姫がいた。ある日、姫が「赤松池に参りたい」というので、お供は姫を駕籠に乗せて赤松池に連れて行く。

赤松池にて、お供の前で僧侶と姫が蛇体になり消える。

赤松池には僧侶がおり(すでに池の中に入っていた?詳細は不明)、お供や姫の前で蛇体となる。「そうから、その姫さんはきゃ、その中に解け込んでしまいなはあたって。ように担ってきた者はびっくりしてしまって。そげしたら、夫婦めおと蛇体になってなぁ、こげに顔だしなはったって。それ昔こっぽり。」

(「伯耆の昔話」pp.252-253より要約)

現代怪談~心霊スポット系YouTuberの配信など

インターネット上で確認できる赤松池のでの心霊体験をカンタンにまとめると、次のような感じ…でしょうか。

・女性の笑い声のを聴いた。一緒にいた人たちのなかでも聞こえた人間と聞こえなかった人間がいた。(参考:赤松の池/本当に怖かった心霊スポット体験談 〜信じる信じないはあなた次第〜)
・「うるせー」という声を聴いた(参考:池に浮かぶ祠。。。ここで〇〇をしてはイケない【鳥取心霊スポット赤松池】/オカルト部)
・池に立っている人の姿を見た(参考:)
・年配の女性による「青い山脈」の歌声が聞こえた。あきらかに自分たちのの目の前から聞こえるのに、声の主の姿は見えなかった。恐怖して、友人と共に急ぎ車に乗り込んだが、その際車の窓ガラスを叩かれたものの、その姿もやはり視認できなかった。(参考:【怪談】本当にあった自分が体験した怖い話(鳥取県大山赤松の池 編)第⑧夜話/鬼神デイドラ)

そんな中でも、伝聞のまた伝聞ですが

僧侶と若い娘がこの池で入水自殺をしたことにより、カップルで訪れるとずぶ濡れで半分腐ったような男女の霊が見つめてくるという話があります。

(引用:赤松の池/本当に怖かった心霊スポット体験談 〜信じる信じないはあなた次第〜)

という、②僧侶と姫大蛇化入水伝承を思わせる噂話もしっかりと伝わってはいるようです。かと思えば、お初の伝説ともちょうど混じったようなお話もあり…。

子供は大きくなり嫁入り前に”お初”は赤松池大明神へお参りに行った。その時、池から蛇が現れ”お初”の身体を巻き付け池に引きずり込んだと言う。それから池から声がする、ずぶ濡れの男女の霊が目撃されてると言う…。

SHINREIKICHIGAI 赤松池 より

なるほどねぇ、根が深いですねぇ。

僧侶と姫大蛇化入水伝承の方についての考察や妄想

蛇体になって赤松の池に消えて行った僧侶と姫のお話は、日本で幅広く語り継がれている蛇婿譚や蛇女房譚とはちょっと違う系統のお話のような気がして面白いなと思ったのですが、

少し考えると一応「蛇婿・嫁入:幸福・水辺出現」あるいは「蛇婿:嫁入り:幸福型」に整理できそうなお話なのかな…と思いました。

(A)「殺害」型嫁入りの途中で異類を殺害する。厳しい排除、異類婚姻の否定の思想が現われている。
(B)「殺害・里帰り」型短期間の夫婦生活があるが、里帰りの途中で異類の夫を殺害する、やや排除の姿勢がゆるんでいるといえる。
(C)「子ども誕生・逃亡」型長期間夫婦生活を続け、子どもまでもうけるが、救出者が現われて人間界に戻る。さらに排除の思想が緩んでいる。子どもは「片側人間」。
(D)「幸福・里帰り」型約束に従って嫁入りし、ときどき里帰りするが、異類の身になっているところを見られて去る。ほとんど排除の思想が見られない。
(E)「幸福・里帰り・子ども誕生」型嫁入りし、子どもまでもうける。ときどき里帰りするが、母子ともに異類の見になっているところを覗かれて、子どもとともに立ち去る。
(F)「幸福・水辺出現」型嫁入りしたのち里帰りもしない。水辺にときどき出現するだけである。蛇の子を伴っていることもある。出現する嫁は「片側人間」。
(G)「幸福」型嫁入りしたあと、二度と人間界に姿を現すことがない。嫁に入ったのち完全に人間界との関係を断ち切っているので、異類婚姻をもっとも肯定しているといえる。嫁入り後やがて完全な異類になり、子どもをもうけたと推測されるのだが、もちろん昔話には記されていない。
(参考:小松和彦著「異界を覗く」pp.90-91 1998年洋泉社)

これの(F)と(G)あたりに繋げられそうな伝承だな、と。

もしかしたら「僧侶と姫の入水」という事件は実際にあって、それが大蛇伝説もある赤松の池という背景でのできごとだったので、そういった条件が合わさってできたお話…なのかもしれません。

そういえば…

ふと「赤松池自体がリアルタイムに入水スポットなのではないか?」とも思いました。

というのも、私が生まれ育った町のお寺にあった池も入水自殺の名所と言われているところがあり、その池の面積は約18077㎡(国土地理院地図の測定器でガバガバに測定)。


となると、赤松池がそこの池より大きければ、入水自殺が頻繁に行われていても不思議ではないのでは?

というガバガバ理論を思いついたので一応測定してみました。(深さとか、ロケーションとかも関係してるとは思いますけれども…;)

ガバガバ測定とはいえこうして図ってみると、赤松池は面積約92090㎡と、私の地元の寺池よりも遥かに大きい池でした。なので、僧侶と姫の心中入水ということはあってもおかしくはないでしょうし、この池を人生の幕引きの舞台に選んだ方というのはその二人だけでもないんじゃないかなぁ…と思います。

(国土地理院地図より。赤松池の面積ガバガバ測定で約92090㎡)

そういうことを考え出すと、現在でも「お初」さんが赤松池を護っているというのは、赤松池で入水しようとされる方々への抑止力や、あるいは鎮魂といった役割も果たしている可能性も…?(そんな詮無い事を考えても仕方ないのですけれども)

僧侶と姫の夫婦蛇体化民話の解釈についてアンケート

さて。

たとえ世界に「事実」と呼べる事象があったとしても、それは7秒あたりのケミカルな働きから億年単位に渡る全てを含んでいるわけで、人間がそれを認識するためには何らかの解釈をほどこさなくてはならない、というのはどなたでもそれなりにご理解いただけることかと思います。

それをどういった世界観・どういった手法で解釈するかによって、認識というのは変化するものだと思われます。ゆえに、人の自然な営みの一環として、この伝承(民話)をベースに、もう少し妄想を膨らませてみたいなと思います。

ここでは主に6パターンの妄想を膨らませてみたので、もし何か気に入っていただけるものがあれば教えてくだされば幸いです。

パターンA:僧侶も姫も人間

A(あ):相思相愛

①僧侶と姫、何かの経緯で恋仲になる。しかし僧侶の身であるゆえ現世で結ばれないことを悟る。
②2人の想いが高じて(あるいは何かに願いが聞き届けられて)蛇体になり、共に赤松池に消える。

A(い):惑わされた姫

①僧侶が姫に一方的に懸想けそう。何かに祈願するor思いが高じるなどして修羅に堕ちる(≒蛇体となる)
②姫を惑わせ、姫をも蛇体にする事に成功、共に赤松池に消える。

パターンB:僧侶は人外・姫は人間

B(あ):相思相愛

⓪僧侶は赤松池に住む大蛇の化身(赤松大明神の眷属的な解釈でも可?)。
①僧侶(蛇)は従来の蛇婿譚よろしく、人間の娘(松江の姫)と結ばれるために行動。
②姫も自分が恋に落ちた相手が人でないことを知るが、結ばれるために望んで蛇体となり、二人で赤松池に消える。

B(い):惑わされた姫

⓪僧侶は赤松池に住む大蛇の化身(赤松大明神の眷属的な解釈でも可?)。
①僧侶(蛇)は従来の蛇婿譚よろしく、人間の娘(松江の姫)と結ばれるために行動。
②姫は惑わされて、やがて蛇体となり、二人で赤松池に消える。

パターンC:僧侶は人間、姫が人外

「お初」さんの話をベースに考えると、姫の方が人外(蛇)だったという方向の膨らませ方もありでは?と思いました。

C(あ):相思相愛

⓪姫は赤松池に住む大蛇の化身(赤松大明神自身)。
①人間の僧侶と恋仲になり逢瀬を重ねるが、それに伴い僧侶は蛇体化する。
②完全に蛇体になる準備が整ったタイミングで二人で赤松池に消える。

C(い):惑わされた僧侶

⓪姫は赤松池に住む大蛇の化身(赤松大明神自身)。
①人間の僧侶を見初めて毎夜池に導き、だんだんと蛇体に変化させる。
②完全に蛇体になる準備が整ったタイミングで二人で赤松池に消える。

…ということで、よろしければアンケートにお付き合いください。


●前の回答を見る→他の方の回答を閲覧することができます。
●回答を編集する→回答の訂正ができます。

※このアンケートに回答するのみで、回答者様の位置情報やメールアドレスが判明することはありません。(→プライバシーポリシー

さて、現在この池に大蛇は何体住んでいるのでしょうか。

  • ブックマーク
  • Feedly
  • -
    コピー