このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。
はじまり、はじまり…
「赤松池の大蛇」物語
ここの奥に大山という山があります。
そこにあるお寺に、綺麗なお坊さまがいました。
… … …
そして、大山の口の方に「赤松の池」という池があります。
どうもそのお坊さんは、
赤松池に毎夜通っては池に入って、通っては池に入って…
を繰り返していたようでした。
というのも、お寺に脱いであったお坊さんの紙の草履が、
毎朝水で濡れていたということなのです。
時を同じくして、松江のあるところ。
そこに住んでいるある長者には、姫さまがいました。
ごくろうさま。あなたたちの駕籠、乗っていてもちっともつらくなかったわ。2人とも力持ちなのね。
そのお姫さまは、よいお人柄で、周りからの評判もとても良い方でした。
! ホントですかっ。いやぁ、姫さまからお墨付きもらったとあっちゃあ、より背筋も伸びるってモンですぜ!
… お褒めいただいて、光栄です。
あなたたちの仕事ぶりが素晴らしいこと、母様にも父様にもよくよく言っておくわ。…ずっとこのお屋敷にいてちょうだいね。
うっす!
お気遣い痛み入ります。
…ある時。松江のお姫さまが
赤松の池に参りたいわ。
と言いましたので、お供の人が駕籠を担って赤松の池まで姫を連れて行きました。
そうして、赤松の池のほとりに着くと、
その池のへりに降ろしてちょうだい
…と姫が言うので、お供の人は駕籠を降ろしました。
… … …
そこで、お供の人は池の側に僧がいることに気づきました。
? あんなところに坊主がいたか?
いや…。御僧!このあたりの御寺の方でいらっしゃいますか?私たちはここの大明神にお参りしに、松江の方からやってきた者です。
… … …ッ
姫は駕籠から降りると、お坊さんのほうへ駆け寄って行きました。
っと、姫!いきなり降りちゃ危ないですよ…って …姫?
…なんだ?あの僧、姫さまのお知り合いか?
お供の人が不思議に思って見ていると、
なんと、お坊さんの姿はみるみるうちに蛇へと変わってしまいました。
! ! !
! 姫様、戻ってッ!その坊主、魔性のモノですッ!
しかし、そのお姫様は蛇になったお坊さんに近づいて行きます。
そうして、姫さまは蛇の体に巻かれるようにして姿が見えなくなり、蛇はそのまま池に入ってしまいました。
― … …
― … …
お姫様のお供の人はびっくりしてしばし言葉を失っていると。
\ぽちゃっ/
池から二匹の蛇が顔を出して、また沈んでいきました。
…なあ、相棒。
俺たちクビになるかな?
…いや。
姫様は旦那さまと大奥様に良く言っておいてくださったはずだ。無碍にはされないと信じよう。
おしまい、おしまい。
アンケート…は今回はナシですが、コラムを充実させました
今回は、コラムを充実させまして、そちらにこのお話の解釈(妄想)に関するアンケートをご用意しました。よければそちらにてお付き合いください。
補足や資料
元の採集場所や文献 | 語り手・西伯郡中山町束積 渡辺よしの |
制作者が参考にした文献 | 昭和51年,日本放送出版「伯耆の昔話」pp.252‐253 |
この「赤松池」は心霊スポットとしても有名らしいです。そのあたりの塩梅もコラムにまとめましたので、よければそちらもご覧ください。
元のお話はお供の人視点で語られているというワケではありませんが、「姫はたいへん評判のよい女房だった」という語りと「お供は驚いた」という語りはあったので、お供の人たちの補償を思わせる大胆めな加筆を行いました。知らんけど…。