このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。
はじまり、はじまり…
「石狩の少年と奥山の白大蛇黒大蛇」物語
あるところに、親を亡くした少年がいました。少年は、6人の息子と娘がいる叔父さん家族に育てられていました。
少年は玄関の物置の隅で犬と一緒に骨を犬かじりながら育てられていました。
…お前、今日はお汁にお肉を入れてきたからね。
父さんにばれないうちに早くお食べ。
一番下の兄と姉は、隠れて少年においしいものを与えていました。
ありがとう…。姉ちゃんと兄ちゃんのおかげで俺もどうにか大きくなることができそうだよ…
おじさんは、少年が良い薪を採ってくると、叩きました。
…チッ!良くしなる薪だなぁ!そこに立ってろ、おまえの体でこの薪の強さを試してやる!
…ッ
父さんはお前がしっかり仕事をすると面白くないのよ。良い薪じゃなくて、もっと悪い薪を持っていきなさい…
姉の助言に従って悪い薪を持っていくと、おじさんは喜びました。
そうそう、こういう使いもんにならねぇ薪だよ、おまえはほんっとーにこの薪みたいに役立たずだよ!あーっはっはっ!!!
少年が山猟に行きたいと言っても…
ざーんねん、貧乏人の子は猟には行けないんだよ!恨むんならお前の親を怨むんだな!
…連れて行ってもらえませんでした。
少年がもう少し大きくなると、一番下の姉はこう言いました。
おまえの親は石狩の村長だったのだけれど、病気で死んでしまったの。
お前のお父さんは、お前が死ぬ前に私の父にお前の面倒をみるように言い遺したんだけど…
私の父は貧乏人だったから…お前の父さんの財産を姉や兄に与えるために、おまえを貧乏人として育てたの。
今はお父さんがこの家の頭だから、何もしてやることができない。ごめんね…
でも神はきっと見ている。何をされても頑張って言われた通りに仕事をしなさい、そうすればいつか…
ある日、少年は最近この村の娘たちが家に来て杵搗きをしていることを不思議に思いました。そんなことを考えていると、下の姉が泣きながらこう言いました。
お父さんが、おまえが大きくなる前に神に頼んで殺してしまう計画を立ててる…!
!?
ああ、神の名を呼び、なんとか守ってもらえるよう祈りなさい!
翌日には酒宴という日、少年は外に出してあった「団子」というものを食べました。初めて食べるお団子のおいしさに、少年は感動しました。
それから、酒宴の前に、下の兄や姉はこう言いました。
どうやら、父さんは明日にはこの石狩川をさかのぼっておまえを行かせるつもりらしい。ああ…
なんてこと…水の神に祈りながら行きなさい。
そうして、いるうちに、おじが少年を家の中に招きました。
今まで家の中に入れてもらえもしなかったのに、きれいに顔や手を洗い、きれいな着物を着せてくれました。
そして犬のお椀に食べ物を入れ、こんなことを言いました。
貧乏人の子どもよ。これを食べたら、舟で川をさかのぼって川上を目指しなさい。やがて神の滝が見えてくるだろう。それを越えて行くと白い霧が立ちこめた神の洞穴があり、そこに住む神に『叔父から使いに出されました。酒宴に来てください』と言うのだ。
神が承諾の咳払いをしたなら、外に出てまた舟に乗って行きなさい。今度は黒い霧が立ちこめているはずだ。そこでも同じように神を招待しなさい。
はい…
下の兄と姉は泣きながら言いました。
ああ、おまえの父が祈っていた神はたくさんいる。お前にもその加護があるように…
神の名を呼びながら行くのよ…。
そうして少年は舟に乗り、神の名を呼びながら川をさかのぼって行きました。
やがて、神の滝が見えてきました。
どうやって登ろうか…
少年が考えていると、舟は高く飛び上がり、滝の上に行くことができました。おじさんが言った通りに洞穴があったので、近くの砂浜に舟をつけて、白い霧が立ちこめた洞窟に入って行きました。
中には火がついたように明るい場所があり、そこに座って少年は言いました。
貧乏人の子である私ですが、おじから遣わされて神様を招待しにやって来ました!
すると白い着物を着た神のような老人が現われ、こう言いました。
驚いた、おまえは貧乏人と言われて育ったのか。では私は行くことにしよう。おまえは私の兄弟のところに行きなさい
そこでまた舟で進んで行くと黒い霧のかかった洞穴があり、同じように神を招待すると、黒い着物を着た神のような老人はこう言いました。
石狩の貧乏人が、おまえを貧乏人として育て、私を招待するというのか。では行くことにしよう。おまえはここまで水の神に運ばれて来ることができたのだ。おまえは村に戻り、心のきれいな人たちと一緒に山の方へ逃げていなさい
老人の言う通り、少年は川を下って村に戻りました。
村に戻った頃は夜になっていました。少年が家に入って行くと、下の兄と姉は喜んでくれました。
ああ、無事でよかった…!神よ、感謝します…
ああ、神々が守ってくださったのね…!よかった…!
ありがとう、でも急いで行こう。ここにいると危ないんだ。
帰ってきたのか!?
少年が生きて帰ってきたことに気づいたおじや他の兄弟たちは顔色が青くなりましたが、少年は
――神がもうすぐ到着されます。
とだけ言って、下の兄や姉たちと外へ出て、山へ逃げて隠れました。そのうち村から危急の叫び声が聞こえてきました。姉は少年を抱きしめて
声をだしてはダメ。動かずにじっとしてなさい…!
と言いました。
夜が明けると、何の音もしなくなりました。下の兄や姉が様子を見に行くと、村にいた人たちはみんなおぼれて死んでしまっていました。
生き残った人たちは古い家は燃やし、その後に新しい家を建てました。
そのうちに少年夢に、あの時に洞窟で出会った神が出て来てこう言いました。
私の一族はとても神の力が強く、おまえの父の守り神だったのだ。父の死後におまえを育てた貧乏人の育て方が悪かったが、おまえが死んでは私たちを祭る者がいなくなってしまうので、おまえを守って来た。水の神もおまえを守り、ここまで運んで来た。
悪い人間は殺してしまったから、これからはおまえが父と母の跡を継ぐのだ。決して悪い心を持たずに、村を大きくして神を敬って暮らしなさい。そして酒が手に入ったら、私たちにまず祈るようにすれば末代までも守ってあげよう
そのように神が言いました。
…と、ある村の子供が物語りました。
おしまい、おしまい。
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補足や資料など
元の採集場所や文献 | 下リンク先参照 |
制作者が参考にした文献 | C009. 石狩の少年と奥山の白大蛇黒大蛇 |
このお話は、蛇が登場しませんが、元資料先で「蛇」で調べた時に出てきたのでピックアップしました。また、「おじさん」の言動・行動は、『洪水で流されるくらい悪いものだった』という解釈で構築しています。気になった方はぜひ元資料も読んでみてください。
このお話の元資料は一人称ですが、三人称に解釈して構成しています。気になった方は元資料も読んでみてください。