このWEBコラムでは、蛇にまつわる日本の昔話を「トークノベル形式のものがたり」でお届けしています。人物の挿絵や状況描写イラストはイメージです。また、登場人物の台詞を現代的な言葉遣いに変更したり、制作者の解釈で付け足したりして再話しています。元のお話の意図を失わないよう意識しながらの制作に努めていますが、そういった営為は「解釈」ぬきには行えないことをご了承ください。利用した出典は明記しておりますので、気になる方はご活用ください。
※このコンテンツは、イラストや動画や、動くエフェクトが使用されています。通信環境の良いところでご覧になられることをおすすめいたします。また、アニメーションの影響で、まれにめまいを覚えられる方や気分が悪くなられる方もいらっしゃいます。体の異変を感じた場合にはすぐ視聴を休止し、安静になさってください。
はじまり、はじまり…。
「ヘビ神に化かされたクマ神」物語
ある時、人間の村に飢饉がやってきました。
人間たちはお腹を空かせて今にも死にそうになっていました。そして、クマ神もまた食べ物がなくてすっかり困っていました。
頼む、魚やシカを出してくれ…。食べ物がなくて困ってるんだ。
クマ神は、魚を司る神様やシカを司る神様に、食料である魚やシカを出してくれと頼みました。
しかし、魚を司る神さまやシカを司る神さまは
知らんな~
知らんなー
…と、相手にしてくれませんでした。
クマ神は困り果ててとぼとぼと自分の家に帰って来ると、来るときにはなかったはずなのに、途中に大きな家が建っているのが見えました。
おおお、肉がたくさん干してある!
外の干し竿には、飢饉だというのにクマやシカや魚の肉がたくさんぶら下がっているのが見えました。
家の中に入っていくと、その家の男性が笑いながら
尊い神様、貴方はお腹が空いておいでのようですね。どうぞ、たくさん召し上がってください。
といって、魚を料理したものをよそって出してくれました。
クマ神は、お腹が空いていたので早く食べたい気持ちに駆られましたが、
(いやいや!私は偉い神なので拝礼の所作を欠かすわけにはいかん…)
と思ったので、食べる前に何度も丁寧に拝礼を重ねました。
そして、いざ食べようと思ってお椀を見ると、山盛りの食べ物だと思っていたものは――
――とぐろを巻いたヘビの山盛りだったのです。
うああああああ!!!
クマ神は驚いて悲鳴をあげ、神窓から外に飛び出して自分の家に逃げ帰って来ました。
な、なな…
何が起こったんだ…。神の力で見通してみるか…
クマ神は、神の力を使って何が起こったのか見通してみることにしました。
そうしてわかったのは、クマ神があがりこんだのはヘビ神の家だということと、ヘビ神たちが転げ回ってクマのことを笑っていること、でした。
あーはっはっはっ!!!イヒヒヒヒっ!!!
飢饉をどうしようかと思って天界から降りてきたが、さっそくクマ神をからかうことができるとはなぁ!
あのクマ神、すかりだまされていたな!こりゃいい土産話ができたぞ
なん…だと…
私はヘビの神からまやかしを見せられていたのか…
クマ神は驚きあきれてながらも、そのまま様子を見ていました。
すると、ヘビの神はさんざん笑った後で立ち上がり、ヘビ模様の着物を頭からかぶって、家を出ると浜に下りていって海の中に入っていきました。
そして蛇神は魚の神の家に入っていき、
わざと尻尾を振り回して戸口にぶつけて大きな音を立て、寝ている魚の神を起こしました。
魚神クーン、お目覚めかな?
ひぃ!!
最近ケチケチしてるみたいじゃん?僕もおなかへっちゃったから君を食べちゃおうカナ~
どうか命はお助けください!!
今、魚を出しますから!
そうして魚を司る神は、魚の骨の入った袋を出して来て、骨を海にばらまきました。すると魚が海や川で飛び跳ねる様子が見えました。
こ、これで文句ないでしょう…!
わかってんじゃーん。ナメたことしたらまた来るからね~
魚の神が一生懸命謝ると、ヘビの神は笑いながら家を出て、今度はシカの神の家を訪ねました。
そうして、魚の神と同じ様にわざと大きな音を立てて入っていきました。
鹿神ちゃ~ん、最近ケチケチしてるみたいだけどなんでかな~?
どうか命ばかりはお助けください!人間がシカを食べるときの行いが悪いので、腹を立てていたんです!
今シカを出します…!2度とこのようなことはいたしません!
といいながら、シカの骨が入った袋を出して来て狩り場に撒くことを約束しました。
ものわかりがよくて助かるよ~約束やぶったらまたすぐ来るからねー
ヘビの神は笑いをこらえつつ帰って来て、仲間の待つ家に来ると大笑いして、ついでに私のことも転げ回って笑っていました。
くっくっくっ…あーはっはっはっ!!
あいつらすーぐだまされるし脅しにも弱いししょーもねーの!いひひひひ!!!
そうして人間たちに夢を見せました。
このようなわけだ。
人間たちの獲物の扱いが悪いために、
魚の神、シカの神が怒って獲物を出さなかったのだよ。
ヘビの神が神々に働きかけ、獲物を再び出してくれるようになったのだ。
これからはヘビの神に木幣を捧げて祈るようにしなさい…
人間たちは、力の残っているものたちが獲物を獲り、弱った人たちに食べさせてすこしずつ元気を取り戻しました。
…ということで、私やヘビの神は人間から木幣を捧げて祈られています
とクマ神が物語りました。
おしまい、おしまい。
アンケート
このお話のアンケートは、色々悩んだ結果うまく作れませんでした。もし、もう少しお付き合いいただけます方は、こちらのコラムで私の相談に乗っていただけますと幸いです。
補足や資料
元の採集場所や文献 | 下リンク先参照 |
制作者が参考にした文献 | C012. ヘビ神に化かされたクマ神 |
このお話は蛇神の性格や行動原理をどう解釈するのが適切か判断しかねるお話しでした。ぜひ、もとのお話しを読んでみて、あなたの感想もお聞かせください。(よければコメント欄へ)
▽こちらにも言及アリ